隣の田中クン
自分の住んでいる賃借マンションには1フロアに2つの部屋しかない。
ある日、ポストを調べるとガス定期検査の結果とマンションのチラシが入っていた。部屋に戻ってマンションのチラシを見てみると2部入っている。「ポスティングのヤツがさぼってやがんな」とそんな事を考えながら、ガスの定期検査の結果をチラっと見たら、あらなんと名前が隣の人の名前「田中○×」になっている。単純に東京ガスの担当者が間違えたと思い、後で隣のポストに入れておけばいいと思ったが…マンションのチラシが2部、そしてガスの定期検査結果が2部…待てよ!
そーなると目撃してはいないが隣のヤツが、自分のポストに入っていたチラシを確認もせずに入れたってことだ!ここで激昂!隣にどなり込もうと思ったが大人気ないし、隣のヤツが連続快楽殺人犯で殺されてはたまらんと、ちょっと落ち着いてから部屋に突撃した。
「はじめまして隣の○○です」
入居して3年になるが隣の人と話すのははじめてだ。
「なんでしょう?」と田中○×。
「ガスの定期検査結果がウチのポストに入ってました」
「それはそれは、すみません」
「いいえ、ちがうんですよ、マンションのチラシも2部入ってたんです」
「それはどーいうことですか?」
「目撃したわけではありませんが、状況証拠から判断するとあなたが入れた事になりますね」
「……そんなことする訳ないでしょう」
「でも単純に考えるとマンションのチラシが2部、ガスの定期検査の結果の書類が2部。これが意味することは明らかですよね」
「そんなことするわけないじゃないですか!」(ちょっと怒ってるみたい)
「いや、別に認めなくてもいいんですよ。言うこと言ったらすっきりしましたから」
「……」と沈黙の田中○×。
「それでは、何かありましたよろしくお願いします」
と別れを告げて部屋へ戻る。
以前は、マンション入り口のポスト付近にチラシが落ちていることがあったが、この日をさかいにそれがパッタリなくなった。隣の部屋の田中○×はポストからチラシを出そうとするたびに、思い出すのかもしれない。ボクに突っ込まれてバツの悪い思いをした事を。


